Instagram認証バッジ（公式マーク）とは？企業が取得するメリット・申請方法・注意点まで徹底解説

Webマーケティングの世界、とりわけ企業の顔として機能するSNS運用に携わる皆様であれば、Instagramのアカウント名横で静かに輝く「青いチェックマーク」の存在を強く意識されていることでしょう。

この「認証バッジ」こそが、今日私たちが深掘りしていくテーマです。

「うちの会社のアカウントにも、あの公式マークを付けられないだろうか」。

そんな漠然とした願望から一歩進み、「どうすれば取得できるのか？」「申請の具体的な基準は？」「そもそも、バッジを持つことで企業活動にどのような実益がもたらされるのか？」といった具体的な疑問をお持ちの担当者様も多いのではないでしょうか。

あるいは、巧妙化する「なりすましアカウント」の対応に追われ、ブランドの信頼性をいかに担保すべきか頭を悩ませている最中かもしれません。

この記事は、まさにそうした企業のSNSマーケティング担当者様、ブランドマネージャー様が抱える切実な課題に応えるために執筆されました。

Instagramの認証バッジに関する基本的な知識から、多くの企業が注目するサブスクリプション型「Meta認証」との詳細な違い、企業がバッジを取得することで得られる戦略的なメリット、そして（ここが肝心ですが）ハードルが高いとされる無料版の取得条件や具体的な申請プロセス、万が一却下された場合の対策に至るまで、網羅的かつ深く掘り下げて解説していきます。

単なる機能紹介に留まらず、認証バッジがユーザー心理に与える影響や、ブランドの権威性を構築する上でいかに重要な役割を果たすのか、その本質に迫りたいと思います。

皆様が日々奮闘されているSNS運用の現場で、この記事が「信頼の証」を勝ち取るための一助となれば幸いです。

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Instagramの「認証バッジ」とは？

まず、基本の確認から始めましょう。

Instagramにおける「認証バッジ」とは、そのアカウントが実在する著名人、有名人、あるいはグローバルブランドや企業の「公式アカウント」であることをInstagram側が公式に認めた証として付与される、青いチェックマークのことを指します。

このマークが持つ意味は、単なる装飾ではありません。

デジタル空間、特に情報の真偽が見極めにくいSNSの世界において、ユーザーに対し「このアカウントは本物であり、信頼に足る情報源である」と瞬時に伝える、極めて強力なシグナルとして機能するのです。

想像してみてください。

あなたがユーザーとして、ある企業の新製品情報を探している時、よく似た名前のアカウントが二つ並んでいたら、どちらをクリックするでしょうか。

片方には認証バッジがあり、もう片方にはない。

答えは明白であり、ほとんどのユーザーが、無意識的にであっても青いチェックマークの付いたアカウントを選択するはずです。

これが認証バッジの持つ「信頼性」の力価（りきか）に他なりません。

特に悪質な偽アカウントによる「なりすまし」行為は、企業のブランドイメージを著しく毀損し、顧客を詐欺的なサイトへ誘導するなど、実害を及ぼすケースが後を絶ちません。

認証バッジは、こうした悪意ある模倣者からブランドを守り、ユーザーが安心して公式情報にアクセスできる環境を整備するための、最も効果的な防衛策の一つと言えるでしょう。

日本国内においても、例えば著名なアパレル企業や、大手ECプラットフォーム、主要な通信キャリアや航空会社など、私たちが日常的に接する多くの大企業がこの認証バッジを活用し、Instagram上での確固たる権威性（オーソリティ）を確立しています。

ユーザーは、このバッジがあることで、そのアカウントが発信する情報（キャンペーン、新サービス、時には謝罪や重要なお知らせ）を、疑うことなく公式のものとして受け止めることができるのです。

サブスク型の「Meta認証」との違い

さて、この認証バッジに関して、2023年以降、非常に大きな変化がありました。

それが、サブスクリプションサービス、すなわち月額料金制の「Meta認証（Meta Verified）」の登場です。

これまでの認証バッジ（以下、区別するために「従来の無料認証」と呼びます）と、この新しい「Meta認証」は、見た目こそ同じ青いチェックマークですが、その性質、取得条件、そして提供されるサービス内容が根本的に異なります。

この違いを正確に理解することが、現代のInstagram戦略を立てる上で不可欠です。

従来の無料認証は、その歴史を遡ると2014年頃から、当初はごく一部の著名人や世界的なブランドを対象に、Instagram側が主体となって付与する形で導入されました。

その後、2018年からは一般のアカウントも「申請」が可能になりましたが、その取得条件は極めて厳格でした。

最も重要な基準は「著名性（Notable）」であり、アカウントが広く世間に認知され、多くの人々に関心を持たれ、検索されている対象でなければならなかったのです。

つまり、「本物である」ことの証明に加えて、「有名である」ことの証明が強く求められたのが、従来の無料認証の最大の特徴でした。

これに対し、2023年7月頃から日本でも順次導入が開始された「Meta認証」は、InstagramやFacebookを運営するMeta社が提供する有料のサブスクリプションパッケージです。

このサービスの最大の違いは、従来の無料認証で最も高いハードルであった「著名性」の条件が大幅に緩和されている点にあります。

もちろん、公的な身分証明書や法人書類による「本人確認（実在証明）」は必須ですが、「有名である」必要はなくなりました。

これにより、これまで認証バッジの取得が難しかった一般の個人クリエイターや、中小規模のビジネス、地域密着型の店舗なども、月額料金を支払うことで認証バッジ（および付随する特典）を手に入れられる道が開かれたのです。

Meta認証で得られる特典は、単に認証バッジが付与されるだけではありません。

むしろ、企業アカウントにとっては、バッジ以外の特典こそが戦略的な価値を持つ可能性があります。

主な特典としては、第一に「積極的ななりすましモニタリング」が挙げられます。

Meta側がシステム的に、認証されたアカウントになりすまそうとする不正なアカウントを監視し、対策を講じてくれるため、担当者が自力で偽アカウントを探し回る負担が大幅に軽減されます。

さらに、「優先的なカスタマーサポート」へのアクセス権も非常に重要です。

Instagram運用において、アカウントのロック、不具合、あるいは理不尽な凍結といったトラブルはつきものですが、通常のサポートチャネルでは返答を得るまでに膨大な時間がかかるか、最悪の場合、適切な対応が得られないケースも少なくありません。

Meta認証のビジネスプラン加入者は、こうした問題発生時に、より迅速かつ専門的なサポートを受けられる可能性が高まるため、これは運用上の強力な「保険」となると言えるでしょう。

まとめると、従来の無料認証は「著名性」を基盤とした「ステータス」の証明であり、Meta認証は「実在性」の証明と「高度な運用サポート」をパッケージ化した「有料サービス」である、と区別することができます。

従来の無料認証は、その取得ハードルの高さゆえに、今なお強力な権威性の象徴であり続けていますが、多くの企業にとっては、Meta認証がより現実的かつ実利的な選択肢となってきているのです。

サブスク型の「Meta認証」の料金

では、その「Meta認証」を利用するには、具体的にどれくらいのコストがかかるのでしょうか。

Meta社は、個人のクリエイター向けとビジネス向けに、複数の料金プランを用意しています。

注意すべき点として、これらのプランは運用者が自由に選択できるわけではなく、アカウントの規模や業種、現在の運用状況などをMeta側が分析し、「あなたのアカウントにはこのプランが適しています」と提示された選択肢の中から選ぶ形式を取っていることが挙げられます。

提示されたプラン以外を希望しても、原則として交渉による変更は認められていません。

2025年現在の情報に基づくと、ビジネス向けのプランは以下のような構成になっているケースが多いようです。

（※料金は為替レートやMeta社の方針により変動するため、あくまで目安としてお考えください）

まず、最も基本的な「ビジネス スタンダード」プランがあります。

これは月額約2,000円（$14.99程度）から提供されることが多く、認証バッジ、なりすまし対策、基本的なサポートが含まれる、クリエイター向けプランに近い内容です。

次に、「ビジネス プラス」プランが設定されています。

料金は月額約6,000円（$44.99程度）が目安となり、スタンダードの機能に加え、企業にとって魅力的な機能が追加されます。

例えば、「拡張プロフィール」機能がその一つです。

通常、Instagramのプロフィールには住所や連絡先を1セットしか記載できませんが、このプランでは最大3件まで追加が可能になります。

これは、複数の店舗を展開する小売業や飲食チェーン、あるいは異なるサービスブランドを持つ企業にとって、非常に有益です。

ユーザーは公式アカウントのプロフィールを見るだけで、最寄りの店舗情報や関連サービスの窓口に直接アクセスできるようになり、利便性が飛躍的に向上します。

さらに、「リール動画内への外部リンク挿入」機能も注目に値します。

通常、リール動画から外部サイトへ誘導するにはプロフィール欄のリンク（いわゆる「プロフリンク」）へ飛ばすしかありませんが、このプランでは月に一定本数（例：月2本まで）、リール動画そのものに「来店予約ページ」や「ECサイトのキャンペーンページ」への直接リンクを設置できる場合があります。

これは、動画コンテンツからのコンバージョン（成果）を直接的に高める強力な武器となり得るでしょう。

さらに上位のプランとして、「ビジネス プレミアム」（月額約16,000円 / $119.99程度）や「ビジネス マックス」（月額約47,000円 / $349.99程度）といった、より高度なサポートや分析機能、広告クレジットなどが含まれるプランも存在するとされています。

これらのプランは、大規模な広告キャンペーンを展開する企業や、より手厚い専任サポートを必要とする大企業向けに設計されていると考えられます。

契約後にプランを変更することも可能とされていますが、必ずしも希望通りの下位プランへ移行（ダウングレード）できるとは限らないため、最初のプラン選定は慎重に行う必要があります。

自社のアカウントにどのプランが提示されるか、そしてそのプランが自社の運用目的とコストに見合っているかを、冷静に判断することが求められるでしょう。

「認証バッジ」の注意点

認証バッジ（無料版・Meta認証共通）を取得する際には、そのメリットだけでなく、いくつかの重要な注意点、あるいは「制約」についても理解しておく必要があります。

最も重要な制約の一つが、認証バッジの申請・承認後、「ユーザー名（@から始まるアカウントID）」が原則として変更できなくなることです。

これは、アカウントの「本物性」「唯一性」を担保するための措置であり、一度認証されたアイデンティティが安易に変更されることを防ぐ目的があります。

もし将来的に、企業のブランドリニューアルや社名変更に伴い、Instagramのユーザー名を変更したいと考えた場合、認証バッジを一度放棄（あるいは剥奪）されるリスクを覚悟しなければなりません。

また、ユーザー名だけでなく、「アカウント名（プロフィールに表示される名前）」や「プロフィール写真（アイコン）」の変更にも一定の制限がかかる場合があります。

これらを短期間に頻繁に変更する行為は、アカウントの乗っ取りやなりすましを疑われる可能性があり、最悪の場合、認証バッジが剥奪されるトリガーとなり得るため、細心の注意が必要です。

ブランドの根幹に関わる部分の変更は、認証申請前に完了させておくか、変更が必要になった場合は慎重な手順を踏む必要があるのです。

さらに、Meta認証に関するもう一つの現実的な注意点として、その「提供状況」が挙げられます。

Meta認証は2023年の導入開始以来、もともとは「利用資格を満たす個人」または「プロフェッショナルプロフィールを利用するクリエイター」を主な対象として提供が開始されました。

ビジネスアカウント（企業アカウント）への提供は、2025年現在も「段階的に拡大している」状況であり、すべてのアカウントが即座に申請できるわけではない、という現実があります。

実際に企業アカウントで設定画面を確認すると、Meta認証の申請メニュー自体が表示されず、「待機リスト（Waiting List）」に登録するよう促されるケースが依然として散見されます。

この待機リストに登録しておくと、そのアカウントがMeta認証の利用資格を満たし、かつ提供の準備が整った時点で、Instagramから通知が届く仕組みになっています。

逆に言えば、待機リストへの登録が促されるということは、現時点では（理由はともあれ）利用資格がない、あるいは提供対象地域・業種ではないと判断されている可能性が高いということです。

利用資格がないと判断された場合、待機リストに登録しても通知が来ないままとなり、申請に進むことはできません。

「すぐにでもMeta認証を導入したい」と考えていても、自社のアカウントの状況によっては、待機を余儀なくされる可能性があることは、計画を立てる上で考慮しておくべきでしょう。

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企業が認証バッジを取得するメリット

認証バッジの概要とMeta認証との違いを理解したところで、次に、なぜ多くの企業がこの青いチェックマークを求めるのか、その具体的な「メリット」について深く掘り下げていきましょう。

認証バッジがもたらす恩恵は多岐にわたりますが、それらはすべて「信頼」というキーワードに集約されます。

なりすまし防止

企業が認証バッジを取得する最大のメリットであり、最も切実な動機となるのが、この「なりすまし防止」効果です。

企業の知名度やブランド力が高まるにつれ、残念ながら、その人気に便乗しようとする悪質な「なりすましアカウント」が出現するリスクは飛躍的に高まります。

これらの偽アカウントは、本物と見分けがつきにくいプロフィール写真やアカウント名を使用し、あたかも公式アカウントであるかのように振る舞います。

その目的は様々ですが、公式を装って偽のキャンペーン情報（例：「当選しました」「限定セール」）をDMで送りつけ、ユーザーをフィッシングサイトに誘導して個人情報やクレジットカード情報を盗み出そうとする手口は、非常に悪質かつ頻繁に見られるものです。

また、企業の公式見解とは異なる不正確な情報を発信したり、ユーザーに対して不適切なコメントを送ったりすることで、企業が長年かけて築き上げてきたブランドイメージや信頼を、一瞬にして地に堕としかねません。

こうした事態が発生すると、企業は対応に追われ、多大なリソースを割かれるだけでなく、顧客からの信用を失うという計り知れない損害を被ります。

ここで、認証バッジが決定的な役割を果たします。

青いチェックマークは、Instagramというプラットフォームが公式に「こちらが本物です」と保証する、最も明確で強力な識別子です。

ユーザーは、アカウント名の横にあるバッジの有無を確認するだけで、そのアカウントが正真正銘の公式アカウントであるかを瞬時に、かつ直感的に判断できます。

これにより、ユーザーは偽アカウントによる誤情報や詐欺被害から守られ、安心して公式アカウントとコミュニケーションを取ることができるようになります。

企業側にとっても、認証バッジは「我々が本物である」と声高に主張し続ける必要性をなくし、ブランドが不当に傷つけられるリスクを劇的に低減させ、顧客が混乱する事態を未然に防ぐための、最も効果的な「防波堤」となるのです。

信頼性やブランドイメージの向上

認証バッジは、防御的な側面だけでなく、積極的なブランド構築においても絶大な効果を発揮します。

前述の通り、認証バッジはInstagramが公式にそのアカウントの「真正性」と「（無料版の場合は）著名性」を認めた証です。

この「公式のお墨付き」は、ユーザーの心理に深く作用します。

バッジを持つアカウントから発信される情報は、それだけで「信頼できる公式情報」として認識され、ユーザーは安心してそのコンテンツを閲覧し、企業が推奨する行動（例：商品の購入、サービスの申し込み）へと進むことができます。

特に、偽アカウントや詐欺的な情報が氾濫する現代のSNS環境において、この「信頼できる」という認識は、ブランドイメージを向上させる上で決定的に重要です。

認証バッジがあることで、企業は単なる情報発信者ではなく、「権威ある情報源」としての地位を確立できます。

ユーザーが商品やサービスを比較検討する際、認証バッジの有無が、最終的な購買決定を左右する「安心材料」となるケースも少なくないでしょう。

企業が発信する情報や開催するキャンペーンに対するユーザーの信頼度が高まれば、それは自然と「いいね！」やコメント、シェアといったエンゲージメント率の向上に繋がり、結果としてInstagramを通じたビジネス成果（例：売上向上、リード獲得）にも好影響をもたらすことが期待されます。

信頼は、すべてのビジネスの基盤であり、認証バッジはその信頼を視覚的に、かつ即座に伝えるための強力なツールなのです。

検索やコメントでの視認性アップ

認証バッジがもたらす恩恵は、心理的な効果だけにとどまりません。

Instagramのプラットフォーム上での「視認性」、つまり「見つけやすさ」「目立ちやすさ」が向上する点も、見過ごせないメリットです。

まず、Instagramの検索結果画面を想像してください。

ユーザーがあなたの企業名や関連キーワードで検索した際、検索結果一覧の中に、認証バッジの青いマークが付いたアカウントがあれば、それは他のどのアカウントよりも強くユーザーの目を引くことになります。

この視覚的な際立ちは、クリック率（CTR）の向上に直結します。

また、Instagramのアルゴリズムは、ユーザーにとって価値が高く、信頼できるコンテンツやアカウントを優先的に表示する傾向があるとされています。

Meta社は「認証バッジ自体が、発見タブやフィードでの表示順位を直接的に優遇するものではない」という趣旨の公表をしていますが、実運用上の観点からは、間接的な影響が期待できます。

なぜなら、認証バッジによって「信頼性」が担保されているアカウントは、ユーザーからのエンゲージメント（いいね、コメント、保存など）を得やすく、その結果としてアルゴリズムから「質の高いアカウント」と評価され、間接的に「発見」タブなどのレコメンデーション（おすすめ）で表示されやすくなる可能性が考えられるからです。

さらに、視認性の向上は検索結果だけではありません。

他の投稿へのコメント欄や、ユーザーへのDM（ダイレクトメッセージ）のスレッド一覧においても、青いバッジは表示されます。

これにより、企業がユーザーの投稿にコメントしたり、DMでカスタマーサポートを行ったりする際にも、「公式アカウントからの返信である」ことが一目瞭然となり、コミュニケーションの信頼性が格段に向上します。

認証バッジが付いているという事実は、ユーザーに対して「このアカウントは人気がある」「影響力を持っている」というポジティブな印象を与え、権威性を補強する効果も期待できるでしょう。

これらの要因が複合的に作用し、潜在的な顧客や未来のフォロワーに対してアカウントや投稿が発見される機会（リーチ）が増加し、企業やブランドの認知度向上に大きく貢献するのです。

凍結リスクの低下

これは、特に日々のアカウント運用に神経をすり減らしている担当者にとって、非常に現実的かつ重要なメリットかもしれません。

近年、InstagramではAIによる不正検知システムの強化や、頻繁なアルゴリズムの変更により、規約違反を意図していない公式アカウントであっても、何らかの理由で誤って「不正な活動」と認識され、アカウントが一時的あるいは永久に凍結されてしまうケースが増加しているという声が聞かれます。

もし企業の公式アカウントが突然凍結されてしまったら、その影響は甚大です。

顧客との重要なコミュニケーション手段が断絶され、予定していたキャンペーンや広告の配信が停止し、これまで蓄積してきた投稿やフォロワーとの関係性が一瞬にして失われる可能性があります。

もちろん、売上への直接的な打撃や、対外的なブランドイメージの毀損（「あの会社のアカウント、凍結されたらしい」という噂）にも繋がりかねません。

このような深刻な「アカウント凍結リスク」に対する一種の保険として、認証バッジ（特にMeta認証）の導入が有効であると考えられています。

認証バッジを取得している（特にMeta認証で身元確認と支払いを継続している）アカウントは、Instagram側にとって「身元が確実であり、継続的に運用されている信頼性の高いアカウント」として認識されます。

これにより、AIによる自動的な不正検知システムにおいて、「誤判定」を受けるリスクが相対的に低下するのではないか、という期待が持たれています。

もちろん、認証バッジがあれば絶対に凍結されないという保証はどこにもありませんし、明らかな規約違反を行えば認証アカウントであっても厳格な措置が取られます。

しかし、少なくとも「身元不明な怪しいアカウント」として誤認識されるリスクを減らし、運用の安定性を高める効果は期待できると言えるでしょう。

優先的なサポートアクセス

前述の「凍結リスク」とも密接に関連しますが、Meta認証のビジネスプランに加入する最大のメリットの一つが、この「優先的なサポートアクセス」です。

Instagramを運用していると、凍結やロック以外にも、アカウントの乗っ取り被害、特定の機能が使えない不具合、広告審査に関する疑問など、プラットフォーム側のサポートが必要となる場面が必ず発生します。

しかし、無料版のInstagramを利用している一般ユーザーや通常のアカウントが利用できるサポートチャネルは非常に限られており、「ヘルプセンター」の定型文を読むしかできない、あるいは「問題を報告」しても定型的な返答しか来ない、といった経験をお持ちの担当者様は少なくないはずです。

重大な問題（例えばアカウント乗っ取り）が発生しているにも関わらず、Meta社と直接コミュニケーションを取る手段がなく、ただ待つしかないという状況は、企業にとって悪夢でしかありません。

Meta認証のビジネスプラン（特に上位プラン）では、こうした緊急事態において、一般ユーザーよりも手厚く、優先的なカスタマーサポート（多くの場合、人間によるチャットサポートやメールサポート）を受けられるとされています。

問題発生時に、迅速に、かつ具体的に状況を説明し、専門家の助けを借りられるという安心感は、企業がSNS運用を継続していく上で、計り知れない価値を持ちます。

このサポート体制こそが、月額料金を支払ってでもMeta認証を導入する、最も強力な動機付けになると言っても過言ではないでしょう。

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Instagram認証バッジ（無料）の取得条件

さて、Meta認証という実利的な選択肢が登場した一方で、依然として「従来の無料認証」はその権威性から取得を目指す企業も存在します。

しかし、前述の通り、この無料認証バッジは、すべてのアカウントに無条件で付与されるものでは決してありません。

Instagramが定める、非常に厳格かつ明確な条件をすべて満たしている必要があります。

Meta認証の登場により、Instagram側は「著名性」の証明が難しいアカウントに対しては有料のMeta認証を促す流れが強まっており、結果として無料版の審査基準は、相対的にさらに厳格化しているか、少なくとも緩やかにはなっていないと推測されます。

無料認証を申請する前に、自社のアカウントがこれらの基準を満たしているか、冷静に評価することが不可欠です。

本物である：実在する企業・団体であること

これは、認証における最も基本的かつ絶対的な前提条件です。

申請するアカウントが、実在する個人、法的に登記された法人、または実体のある団体を表していることを、公的な書類によって証明できなければなりません。

個人の場合（企業の代表者や著名な創業者など）は、運転免許証、パスポート、マイナンバーカードといった、政府発行の顔写真付き身分証明書の提出が求められます。

企業や団体の場合は、その法的な実在と申請者との関連性を証明するために、登記簿謄本（履歴事項全部証明書）、会社の定款、納税申告書、あるいは直近の公共料金（電気・水道・ガスなど）の請求書といった、信頼性の高い第三者機関が発行した書類の提出が必要です。

Instagram側は、提出されたこれらの書類と、アカウントのプロフィール情報（会社名、住所、ウェブサイトなど）を厳密に照合し、アカウントの「真正性（Authenticity）」を徹底的にチェックします。

ここで少しでも疑義が生じれば、他の条件をどれだけ満たしていても審査を通過することはありません。

唯一である：原則1アカウントのみ

次に、「唯一性（Uniqueness）」の条件です。

Instagramの認証バッジは、原則として、一つの個人または一つのブランド（ビジネス）につき、一つのアカウントにのみ付与されます。

これは、もし同一の企業が複数の「公式」を名乗る認証アカウントを持っていた場合、ユーザーがどれを信頼すべきか混乱してしまう事態を防ぐためです。

企業は、自社が運用するすべてのアカウントの中で、最も中心的であり、公式な発信母体となる「メインアカウント」を一つ選んで申請する必要があります。

もちろん、これには例外も存在します。

例えば、グローバルに展開する大企業が、言語ごと（例：日本語版公式、英語版公式）や、特定の国・地域に特化した（例：日本支社公式、米国本社公式）アカウントを個別に運用しており、それぞれが独立した情報発信体として機能している場合など、明確かつ正当な理由がある場合に限り、例外的に複数のアカウントが認証されることもあります。

しかし、一般的な国内企業のアカウント運用においては、認証対象は「メインの公式アカウント一つのみ」と考えるのが妥当でしょう。

完全である：公開アカウント、プロフィール情報、投稿

申請を行うアカウントは、ユーザーがアクセスした際に「完全な」状態であり、アクティブに運用されている必要があります。

この「完全性（Completeness）」には、いくつかの具体的な要件が含まれます。

第一に、アカウントが「公開アカウント」に設定されていることです。

フォロワーリクエストを承認しなければ投稿が見られない「プライベート（非公開）」設定のアカウントは、不特定多数のユーザーに向けた「公式」の証である認証の対象外となります。

第二に、プロフィール情報が完璧に設定されていることが求められます。

具体的には、プロフィール写真（企業のロゴなど、アカウントを象徴するもの）、自己紹介文（どのような企業・ブランドであるかを明確に記述）、そして公式ウェブサイトへのリンク（存在する場合）が、すべて適切に設定されていなければなりません。

自己紹介文が空欄であったり、ウェブサイトのリンクが切れていたりするような、管理が行き届いていないアカウントは「完全」とはみなされません。

第三に、少なくとも1件以上の投稿がすでに行われている必要があります。

アカウントを作成したばかりで何も投稿がない状態では、そのアカウントが本当に活動しているのか、どのような情報を発信するのかをInstagram側が判断できないためです。

これらの条件は、Instagramが認証バッジを付与するアカウントが、ユーザーに対して十分な情報を提供しており、かつ継続的に（放置されずに）運用されている実体があることを確認するために設けられています。

有名である：広く認知されていること

そして、これこそが従来の無料認証における最大の難関であり、多くの申請者が涙をのむポイント、「有名である（Notable）」という条件です。

Meta認証が「本物である」ことの証明（実在性）を重視するのに対し、無料認証は「本物である」ことに加えて、そのアカウントが「広く一般に認知されており、多くの人々が関心を持って検索したり、話題にしたりする対象である」ことを強く要求します。

Instagramは、この「有名性」を判断するために、申請されたアカウントが「複数の、独立した、信頼できるニュースソース」で取り上げられているかどうかを非常に重視します。

ここでの「ニュースソース」とは、権威ある新聞（全国紙、主要な地方紙）、テレビ局、大手雑誌、信頼性の高い業界専門誌やオンラインメディアなどを指します。

重要なのは、「独立した、信頼できる」という点です。

企業が自ら費用を支払って掲載した広告記事、ペイドパブリシティ（記事広告）、あるいは自社で発信したプレスリリースそのものや、自社のオウンドメディア（ブログなど）での言及は、「有名性」を証明する証拠としてはカウントされません。

評価の対象となるのは、あくまで第三者のジャーナリストや編集者が「ニュース価値がある」と判断し、その企業やブランドについて自発的に（広告費とは無関係に）報道・論評した記事です。

したがって、無料認証を目指すのであれば、単にSNS運用を頑張るだけでなく、広報・PR活動に力を入れ、自社の活動や製品が客観的なニュースとしてメディアに取り上げられるような実績を積み重ねる戦略が不可欠となります。

Instagramは、メディアでの報道実績以外にも、補助的な判断材料として、他の情報源も考慮するとされています。

例えば、Googleなどの主要な検索エンジンにおいて、その企業名やブランド名がどれだけ頻繁に検索されているか（検索ボリュームやトレンド）も、世間的な認知度を測る指標となり得ます。

また、Instagram以外の主要なSNSプラットフォーム（例：X（旧Twitter）、Facebook、YouTubeなど）や、信頼性の高い情報源（例：Wikipediaの独立した記事など）で、そのブランドや個人がどれだけ言及され、話題になっているかも考慮される可能性があります。

よく「フォロワー数が何人以上必要ですか？」という質問がありますが、Instagramは「フォロワー数自体は有名性の直接的な条件ではない」と明言しています。

もちろん、フォロワーが数千万人いるようなアカウントは、それ自体が「有名性」の間接的な証拠となりますが、フォロワー数が多くてもメディア露出が皆無であれば「有名性」が認められず、逆にフォロワー数は少なくても全国的なニュースで大きく取り上げられた実績があれば「有名性」が認められるケースもあり得るのです。

この「有名である」という基準のハードルの高さこそが、多くの企業にとって、より現実的なMeta認証の導入を検討する大きな理由となっています。

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Instagram認証バッジの申請方法

それでは、これらの条件（特にMeta認証の条件）を満たしている、あるいは無料認証の「有名性」に挑戦する準備が整ったとして、実際に認証バッジを申請する際の手順について解説します。

申請プロセス自体は、Instagramアプリ内から比較的簡単に行うことができます。

アプリ内からの申請手順

まず、認証を希望する企業アカウントでInstagramアプリにログインし、自社のプロフィールページを開きます。

プロフィールページの右上にある、三本線のメニューアイコン（ハンバーガーメニューとも呼ばれます）をタップして、設定メニューを開いてください。

メニューをスクロールしていくと、アカウントの種類によって表示が異なりますが、「プロフェッショナル向け」のセクションや、「設定とプライバシー」の中などに、「Meta認証」または「認証をリクエストする」（無料認証の場合）といった項目が見つかるはずです。

（前述の通り、Meta認証がまだ利用できないアカウントの場合は、ここに「待機リストに登録する」と表示されることがあります）

申請可能な項目をタップすると、画面の指示に沿って必要な情報を入力するプロセスが始まります。

氏名（個人の場合）やブランド名（企業の場合）を正確に入力し、次に本人確認または法人の実在証明のための書類をアップロードします。

無料認証の「有名性」を証明する場合は、メディア掲載の実績を示すリンクや、アカウントのカテゴリ、ターゲット層などを説明する欄も設けられています。

すべての情報の入力と書類のアップロードが完了したら、最後に「送信」ボタンをタップします。

これで申請手続きは完了です。

無料認証の申請の場合、Instagramによる審査が行われ、その結果は通常30日以内にアプリ内の「アクティビティ（お知らせ）」タブに通知されます。

サブスクリプション型のMeta認証の場合は、申請内容（特に身分証明）に不備がなければ、比較的迅速に（場合によっては即日～数日程度で）審査が完了し、定期購入の手続きに進むことができるようになります。

申請が却下された場合の対処法と再申請のポイント

Instagramの認証バッジ申請、特にハードルの高い無料認証の申請は、一度でスムーズに承認されるとは限りません。

もし申請が却下されてしまった場合、まずは落ち着いて、その理由を分析することが重要です。

一般的な却下理由としては、いくつかのパターンが考えられます。

最も単純なミスとして、申請フォームの入力内容に誤りがあったり、必須項目が未記入であったりする「情報の不備」が挙げられます。

また、提出した本人確認書類や法人証明書類が不鮮明で読み取れない、有効期限が切れている、あるいはInstagramが指定する要件（例：登記簿謄本ではなく、会社のパンフレットを提出したなど）を満たしていない「提出書類の不備」もよくある理由です。

特に、書類はPDFやWordファイルなどの形式ではなく、鮮明な画像ファイル（JPEGやPNG）として提出することが求められるケースが多いため、形式の確認も怠ってはいけません。

そして、無料認証において最も多い却下理由が、やはり「申請条件を満たしていないアカウントと判断された」場合、すなわち「有名性」の基準をクリアできなかったケースです。

Instagram側から「あなたのブランドは十分に有名ではありません」と明確に通知されるわけではありませんが、他の書類等に不備がないにも関わらず却下された場合は、この「有名性」が不足していると判断された可能性が極めて高いと言えます。

その他、稀なケースですが、アカウントの過去の運用履歴において、Instagramのコミュニティガイドラインや利用規約に違反する行為（例：スパム行為、ヘイトスピーチ、著作権侵害など）が見られた場合も、認証は却下されるでしょう。

申請が却下された場合でも、落ち込む必要はありません。

Instagramでは、一度却下された後も、30日が経過すれば再度、認証を申請することが可能です。

この30日間は、単に待つ期間ではなく、却下された理由を克服するための「準備期間」と捉えるべきです。

もし書類不備が原因だと思われる場合は、次回申請時までに、鮮明で有効期限内の、正しい種類の書類を完璧に準備し直しましょう。

もし「有名性」が不足していると判断されたのであれば、この30日間（あるいはそれ以上の期間）で、自社の「有名性」を高めるための具体的なアクションを起こす必要があります。

例えば、積極的に広報・PR活動を展開し、第三者メディア（新聞、雑誌、権威あるWebメディア）に取り上げられる実績を作ることに注力します。

質の高いプレスリリースを配信したり、メディア関係者とのリレーションを構築したりするなど、地道な努力が求められます。

同時に、Instagramアカウント自体の「完全性」も見直し、プロフィールが最新かつ魅力的であるか、質の高いコンテンツが一貫して投稿されているか、フォロワーと誠実なコミュニケーションが取れているか、といった点も再点検しましょう。

しかし、ここで冷静な戦略的判断も必要になります。

もし、自社がニッチなBtoB企業であったり、地域密着型のスモールビジネスであったりして、客観的に見て「全国区のニュースメディアで頻繁に取り上げられる」ほどの著名性を短期間で獲得するのが現実的でない場合。

その場合は、ハードルの高い無料認証に固執し続けるよりも、月額料金を支払ってでも「なりすまし対策」や「優先サポート」といった実利を得られる「Meta認証」の導入に舵を切る、という判断が賢明かもしれません。

自社のリソースと、認証バッジに求める目的（権威性なのか、実利的なサポートなのか）を天秤にかけ、最適な戦略を選択することが重要です。

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まとめ｜企業にとって認証バッジは「信頼の証」

Instagramの認証バッジについて、その基本的な定義から、注目のMeta認証との違い、企業が得られる具体的なメリット、そして厳格な取得条件と申請方法に至るまで、詳細にわたり解説してまいりました。

青いチェックマークは、もはや単なるステータスシンボルではなく、デジタル社会における企業の「信頼性」を可視化し、ブランドを悪意ある攻撃から守り、顧客との健全な関係性を築くための、極めて重要な戦略的ツールとなっています。

特に、巧妙化するなりすましアカウントの脅威や、SNSプラットフォームのサポート体制への不安といった、現代のSNS運用が直面する現実的な課題に対し、認証バッジ（特にMeta認証）は明確な解決策の一つを提示してくれています。

従来の無料認証が「著名性」という高いハードルを課す一方で、Meta認証は「実在性」の証明と月額料金によって、より多くの企業に「信頼」と「安心」を手に入れる道を開きました。

もちろん、認証バッジを取得することは「ゴール」ではありません。

それはあくまで、ユーザーからの信頼を得るための「スタートライン」あるいは「手段」の一つに過ぎないのです。

本当に重要なのは、そのバッジが象徴する「信頼」を裏切らない、誠実かつ価値のあるアカウント運用を日々継続していくことです。

認証バッジの有無に関わらず、一貫したブランドメッセージを発信し、ユーザーの声に耳を傾け、質の高いコンテンツを提供し続けることこそが、SNSマーケティング成功の王道であることに変わりはありません。

この記事が、皆様のInstagram運用戦略において、「信頼」という無形の資産をいかに構築し、守り、そして育てていくかを考える一助となれば、これほど嬉しいことはありません。

自社にとって最適な認証の形を選択し、Instagramという強力なプラットフォームを、ビジネスのさらなる飛躍のために最大限活用していきましょう。